悼む人/天童 荒太
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久しぶりに、天童荒太が単行本を出した。


なんと、”悼む人”


いったいどうなことをするのだろうか。


しかも、何のために・・


そういう読者の疑問にも答える形で話は進む。


まず、その悼む人、坂築静人。


もしも、彼に道で出会うとすれば、多くの人がその行動に疑問をもつだろう。


宗教でもなく、ひたすら、悼むとは・・・


そういう疑問の答えを出すべき雑誌記者が登場する。


彼は、その影響を受け、次第に変わっていく。その過程では、自らの不幸を乗り越えていく。


もう一人の理解者として、夫を殺した女性が登場する。自分が夫を殺さざるを得なかった過去。幻覚として死んだ夫の姿が悼む人への疑問をささやきつつも、悼む人と行動をともにする。そして、最後には、心を通わせつつも、身近らも悼む人の後を追う。


そして、もう一人の理解者として、悼む人の母が登場する。悼む人が悼む人にならざるを得なかったことを理解し、自らも癌と戦う。


そして、今も悼む人は旅を続けているのだろう。


この世に、死者がいる限り・・・


どこかで、悼む人が旅を止めることを期待したが、やはり、止める事は、できない。


そういう面では、宗教でもなく、巡礼でもなく・・・出口が見えない・・・


普通の幸せを描けない。


そういう悼む人が抱えている心のキズが大きすぎるのだろうか。


彼の旅がどこかで収束することを祈るのみである。



【内容】

全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、 人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる

聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著者の最高倒達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語

なお、今回直木賞受賞作品である。